2021年1月より、静岡県へ移住し「アーツカウンシルしずおか」でチーフプログラム・ディレクターとして勤務しているため、アートスペースとしての「クシノテラス」の活動はお休みしていますが、このたび第1回目のクシノテラス所蔵品展を「にしぴりかの美術館」で開催する運びとなりました。今回ご紹介するのは、4名の表現者たちです。
大阪府在住のラーテルさん(あなぐまハチロー)《生年非公開》と名乗る女性は、発達障害や鬱病、統合失調感情障害など、さまざまな障害を抱え、中学生のときから自宅で不思議な生物を描いて過ごしています。神奈川県在住の小林伸一《1939-》 さんは、75歳ごろから自宅の外壁だけでなく、トイレや風呂場など一軒家全てを手描きの絵で埋め尽くすようになりました。天井にもお菓子などをモチーフにした絵を貼るなどの徹底ぶりです。島根県在住の戸舎清志《1969-》さんは、建物以外の道路や駐車場、空き地などすべての空間が、たくさんの車で埋め尽くされた町の俯瞰図を描き続けています。そして、栃木県那須高原にある私設博物館「創作仮面館」の館主を務めていたストレンジナイト《生年非公開-2018》と名乗る人物は、人前に出るときは常に自作の仮面を被り、人目を避けマスクマンとして生活していました。館の内外には、彼が制作した多量の仮面やオブジェ、絵画などがいまも残されています。
性別や生まれ育った場所など異なる環境に置かれた4名の表現者たちですが、共通しているのはそれぞれが独自の世界を構築し、圧倒的な数の作品をつくりだすことで、それを生きる力へと変換している点です。新型コロナウイルスの感染拡大が続き、自由に外出することも危ぶまれる状況ですが、こんなときこそ彼ら彼女らのようにみずからの表現へ没頭することで、未来への希望を紡いでみるのも良いのかも知れません。遠くなってしまった宮城県に思いを馳せながら、僕も静岡から展覧会の動向を静かに見守りたいと思います。